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幸せか不幸せかは腸内環境で決まる

腸内環境の良し悪しで幸せは決まる

「人の幸せは、腸で作られている」と言われると、驚いた人がたくさんいるのではないでしょうか。幸せな気分になれるか、不幸な気分になるかは、腸のコンディションによって左右されています。幸せか不幸かは、腸が決めているといってもいいでしょう。その理由は、セロトニンやドーパミンなど「幸せ物資」のもとが、腸内細菌によってつくられているからです。

 

セロトニンは、心をしゃんとさせたり癒し系の充足感を生んだりして「安定した幸せ感」をもたらしてくれます。逆境のときに、気持ちを奮い立たせ、脳や体を覚醒させ「ヤル気」をおこさせるという役割を果たす物質で、不幸を蹴散らしてくれる「幸せ物質」とも言えます。

 

一方、ドーパミンは脳に歓喜や快楽、興奮といったメッセージを伝える働きのある神経伝達物質です。歓喜、快楽、興奮は「幸せ感」に欠かせない要素でもあり、これらが高まればより一層「幸せ感」が増幅します。心をワクワクさせたり好きなものへの欲求を高めたりして「気持ちいい幸せ感」をもたらしてくれます。

 

わたしたちの幸せ感は、これら2つの幸せ物質が脳に分泌されることによって生み出されているといっていいでしょう。そして、これら2つの幸せ物質は、いずれも腸で生み出されているのです。

 

正確に言うと、腸内でつくられているのは、セロトニンとドーパミンの前駆体です。セロトニンのほうは、5-ヒドロキシトリプトファンという前駆体が合成され、ドーパミンのほうはL-ドーパという前駆体が合成されます。これらの前駆体が脳に運ばれ、脳に入ってからは、セロトニン、ドーパミンという神経伝達物質として利用されることになるのです。

腸は幸せ物質の出荷工場

つまり、腸は「幸せ物質を合成して出荷している工場」のような働きもしていたわけです。腸内フローラは「健康をつくる工場」だけではなく「幸せをつくる工場」でもあったわけです。この幸せ生産工場において、腸内細菌は、幸せ物質を合成し、商品として出荷する作業に従事しています。

 

ですから、工場内に腸内細菌という作業員がたくさんいて、ヤル気を出して活発に働いていれば、たくさんのセロトニンやドーパミンの前駆体がつくられて、さかんに脳へ送られることになります。そうすれば、わたしたちはより幸せな気分で過ごせることが多くなります。

 

一方、腸内細菌が少ししかいなくて、ヤル気もない状況だと、セロトニンやドーパミンの前駆体がろくにつくられず、脳にもほとんど送られなくなってしまいます。すると、脳内の幸せ物資が減少し、わたしたちはだんだん何事にも幸せを感じるられなくなってくるようになります。あまりに不足してくれば、気分が落ち込んだり、ヤル気がなくなってきたりするでしょう。

幸せ物質は腸内細菌がいないと作れない

たとえば、セロトニンは食物に含まれるトリプトファンという必須アミノ酸から、また、ドーパミンもフェニルアラニンという必須アミノ酸がないと合成できないのですが、食物によってトリプトファンやフェニルアラニンをたくさん摂取しても、腸内細菌が少なければ、セロトニンやドーパミンは増えないことが明らかになっています。

 

このように、腸内細菌が多いか少ないか、腸内環境がしっかり保たれているかいないかは、幸せ物質の生産量を大きく左右します。そして、その生産量の変化が私たちの心の健康に大きな影響を与えるいるのです。

 

人体のセロトニン量は、約10ミリグラムほどです。そのセロトニンは100%腸でつくられていて、全体の約90%が腸に存在しています。残りの8%は血小板に取り込まれ、脳に存在しているセロトニンはたった2%しかありません。セロトニンは、わたしたちの心の健康を左右するくらいの大切な物質です。その90%が腸にあるのですから、心の健康に対し、腸がいかに大きな影響力を持っているかがわかるのではないでしょうか。

心の病を腸から治す

幸せになれるか、不幸になるかは、腸で決まっているのです。だからこそ、幸せに生きていくためには、腸を大事にし、腸を喜ばせていく必要があるのです。

 

最近では、「心の病気は腸から治すべきだ」とう考え方も徐々に広がってきているようで、精神科の医師のなかにも、食事療法でうつ病を治療しようという人がぽつぽつと現れるているようです。

 

うつ病をはじめとした心の病気を患う患者さんは、腸内環境が悪く、腸内細菌が少ない傾向が顕著というデータがあり、腸の不調が原因でセロトニン不足になり、うつ病につながっている可能性が大きいと考えられているからのようです。