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猫の種類によってかかりやすい病気はあるのですか?

猫種別の遺伝病

形態的な特徴あるいは遺伝的背景などにより、猫種によってかかりやすい病気が知られています。

猫の遺伝病に関しては、犬と比べると知られている病気の数は少ないです。ただし、知られている病気が少ないだけで、次に挙げるような遺伝病以外にも多くの遺伝病があると考えられます。ここでは、これまで明らかにされている主な遺伝病について解説します。

ペルシャの多発性腎嚢胞

多発性腎嚢胞はペルシャの他にも、ペルシャの雑種、長毛種においても遺伝病としてみられます。腎臓に多くの小さな嚢胞(内部に嚢胞液という液体を含んだ袋状の構造)が形成されて、この嚢胞が徐々に大きくなることで、次第に腎臓の組織を圧迫、破壊して、最終的に腎不全を引き起こします。

手で腹部を触ると気づくこともありますが、正常な腎臓の組織が残っている場合は、無症状のまま進行することもあります。また、腎臓に嚢胞ができるとともに、肝臓にも同様な嚢胞が形成されることが多いです。嚢胞は超音波検査などの画像診断で確認することができますが、根治治療の方法はありません。定期的な検査を行い、早めに発症を確認することです。

メインクーンの肥大性心筋症

肥大性心筋症はメインクーンにおいて遺伝病であることが知られていますが、アメリカンショートヘアやペルシャも好発種です。この病気は心臓の左心室が肥大するとともに、右心室が狭くなります。

肥大が軽度なときは無症状の場合もありますが、重度になると肺水腫や胸水が溜まることにより、呼吸困難や発咳が生じます。また、全身に血液を送る左心室に異常があるので、体の諸臓器に血液がうまく送ることができなくなり、元気や食欲の低下が見られます。さらに、後肢に血液を送る大腿動脈に血栓がつまることで、突然の後肢麻痺がみられたり、後肢が冷たくなる症状が生じることがあります。

内科的な治療で肥大性心筋症の進行を遅くすることはできますが、後肢麻痺など、重度に進行した際の予後はよくありません。

スコティッシュフォールドの骨軟骨異形成

垂れ耳同士の交配で生まれた子で、高頻度に発生する病気です。スコティッシュフォールドのたれ耳は耳介軟骨の形成異常によるものなので、同じような異常が他の部位の軟骨や骨にみられたものと考えられます。成長期において、四肢の関節や尾骨で、骨や軟骨の異形成が見られます。症状の進行に伴い、関節が動かせなくなり、また強い痛みを伴いますい。効果的な治療法はまだ見つかっていません。

アビシニアンの進行性網膜萎縮

網膜の変性は、猫にとって重要な栄養素の一つであるタウリンの欠乏でも起こりますが、アビシニアンでは遺伝病としての網膜萎縮が知られており、また、ペルシャでも遺伝性の病気である可能性が示唆されています。アビシニアンの進行性網膜萎縮には、生後早期(生後4週間前後)から異常が認められるタイプと、生後1年を過ぎてから異常が認められるタイプの2つがあります。両方に共通しているのは、網膜の血管が細くなることで、発症の時期が早い場合には、最終的に網膜の血管が消失して失明に至ることもあります。効果的な治療法は見つかっていません。

アビシニアン、ソマリのピルビン酸キナーゼ欠損症

ピルビン酸キナーゼは赤血球に含まれる酵素で、ピルビン酸キナーゼの遺伝子に異常があり赤血球が壊れることにより、貧血(溶血性貧血)と脾腫が生じます。アビシニアンとソマリで見られる病気です。

マンクスの脊椎奇形

マンクスにおいて、仙骨など尾側に近い部位でおこる椎骨の形成不全で、尿・便の失禁や、後肢の異常(皮膚感覚の麻痺、筋の萎縮)、脳脊髄液の漏出がみられます。治療は困難で、長く生きられないことが多いです。

 

これらの病気以外に、遺伝性であることが疑われていたり、遺伝する場合がある病気として次のようなものが知られています。

アビシニアン:毛管障害、先天性甲状腺機能低下症
アメリカンショートヘア、ラグドール:肥大性心筋症
デボンレックス:筋障害
シャム:接合部表皮水疱症、口蓋裂、水頭症
バーミーズ:低カルシウム血症性多発性筋障害
ヒマラヤン:皮膚無力症

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