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気管虚脱について

気管虚脱について教えてください

気管は、気管輪状靭帯とU字型をした気管軟骨が、連続して交互に並んだ構造をしています。この構造が何らかの原因によって保てなくなり、気管内腔が狭窄(狭くなる)して気管が扁平(平らになる)となる状態を、気管虚脱といいます。

 

通常、背腹の方向に起こることが多いとされていて、頸部の気管が虚脱する場合と、胸部の気管が虚脱する場合があります。両方が虚脱することもあります。また、気管の奥の気管支が虚脱することもあります。

 

気管虚脱がみられやすい主な犬種としては、ポメラニアン、チワワ、ヨークシャーテリア、ミニチュアプードルなどの小型犬種やトイ犬種が挙げられます。

気管虚脱の症状

気管虚脱は、一般的に4歳以降から徐々に進行していきます。春から夏にかけての高温多湿期に多く発症し、運動後や激しく吠えた後や、首輪が頸部を圧迫刺激した後などに悪化します。

 

初期には、特徴的なガチョウの鳴き声に似た乾性の咳が認められます。落ち着きなく歩き回ったかと思うと座り込むことを繰り返し、舌を出して苦しそうに呼吸したり、よだれを垂らしたりします。また、肺からの分泌物を排出するために、嘔吐することが多いようです。

 

症状が進行すると、慢性的に呼吸困難を繰り返すようになります。そして運動不耐性に陥り、重症の場合は、チアノーゼがみられたり失神したりします。

 

呼吸器系の障害が大きい場合には、心臓機能の障害も認められるようになります。また、犬はパンティング(あえぐような呼吸)によって体温調整を行っているため、体温調節機能をも妨げて、体温上昇による脳障害を引き起こすこともあります。

 

※運動不耐性とは:体調の影響から運動しなくなること。具体的には、元気がなく疲れやすい、動きたがらない、倒れる、など。

※チアノーゼとは:血液中の酸素欠乏や二酸化炭素が原因で、皮膚や粘膜が青紫色になること。

気管虚脱の治療

気管虚脱は、通常のX線検査や造影剤を使ったX線透視検査によって診断します。気管支鏡(電子スコープまたはファイバースコープ)による検査を行うと重症度が確認できます。また、頸部の触診によって、扁平化した気管輪を確認することができます。

 

症状に応じて気管支拡張薬を投与します。感染症を併発している場合には、同時に抗生物質による治療も行います。診察にあたってストレスが予想されるときは、事前に鎮静薬を投与することもあります。

 

外鼻孔狭窄や軟口蓋過長のように、呼吸を妨げるような解剖学的な異常が認められる場合には、外科的処置を行います。

 

気管そのものに対する外科的療法(手術による治療)は、内科的療法(薬物による治療)に反応しない場合や、重度の呼吸困難を伴う頸部の虚脱がみられる場合に考慮します。

気管虚脱の予防

気管虚脱による症状は興奮、高温多湿、運動などによって悪化しますので、これらを避けた飼育環境を整えます。また、肥満している犬に対しては、食事療法によって体重を減少させます。

 

首輪の使用は、頸部を圧迫刺激して症状を誘発することになるため、ハーネス(胴輪)を用いるとよいでしょう。

 

散歩中などに、ほかの犬に向かって吠える犬をみかけますが、それが気管虚脱を引き起こす可能性を高めているといえます。こうしたことが多いようならば、散歩のコースを変えるなどといった対策も必要になります。

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