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拡張型心筋症について

拡張型心筋症について教えてください

拡張型心筋症とは

拡張型心筋症とは、なんらかの原因で心筋(心臓の外壁をつくる筋肉)が薄くなり、心臓の内腔(内側の空洞)が拡張する結果、心不全に陥る病気です。

 

発生は雄に多く、平均4~6歳ころから、うっ血性心不全の症状がみられるようになり、失神や突然死に見舞われることもあります。大型犬全般に多くみられます。

 

※心不全とは:血液の拍出力低下を招いて、全身の血液が循環不全になること。

 

うっ血性心不全の症状は、具体的には、不整脈、心拍数の増加、発咳(咳をする)、食欲不振、運動不耐性(元気がなく疲れやすい、動きたがらない、倒れるなど)、腹囲膨大、頸静脈の怒張(ふくれる)、皮下浮腫(むくみ)などです。

 

※うっ血性心不全とは:静脈血が静脈内に停滞充満した状態をうっ血といい、うっ血によって、心臓の機能が障害を受けた状態をうっ血性心不全といいます。

拡張型心筋症の原因

今のところ拡張型心筋症の明確な原因は不明ですが、遺伝的要因が強く疑われています。

 

ちなみに、コッカースパニエルにおける拡張型心筋症は、タウリンとカルニチンの不足が原因ではないかと示唆されています。また、猫の場合は、タウリンの不足によって、二次的に拡張型心筋症を発症することが証明されています。

 

拡張型心筋症は心筋が薄くなる病気ですが、このメカニズムそのものは解明されています。心筋に限らず、筋肉が収縮する際にはカルシウムイオンが大きく関与しています。拡張型心筋症では、心筋のなかでカルシウムイオンの輸送について障害が生じるため、筋原線維の壊死を引き起こし、その結果として心筋が薄くなります。

 

このため収縮力の低下した心筋は、全身に血液を循環させることが難しくなり、静脈内に血液が停滞充満して、いわゆるうっ血性心不全の状態を引き起こします。

 

※タウリンとは:心筋、骨格筋、白血球などさまざまな組織に存在して、心筋、神経、脳の発達、目の網膜機能などの維持に関わっている。人間や犬など多くの動物は体内で、含硫アミノ酸のメチオニンとシスティンから作られる。しかし猫は、体内でタウリンを作ることができないため、タウリンがが豊富に含まれている動物性の食べ物(肉や魚介類など)を積極的に与える必要がある。

 

※カルニチンとは:必須アミノ酸のり人とメチオニンから作られる。脂肪を燃やしてコレステロールの増加を抑制する。牛肉や羊肉などに豊富に含まれており、ビタミンBTとも呼ばれる。

拡張型心筋症の治療

ます、聴診、X線検査、心電図検査、心臓超音波検査(通称:心エコー)によって類症鑑別(似た症状のほかの病気との区別)を行います。拡張型心筋症と診断されたら、明確な原因が不明なので、通常は対処的治療を行います。なお、明確な原因が不明なので、予防方法はわかっていません。

 

※対処的治療(対処療法)とは:病気の原因を取り除くのではなく、病気によって起きている症状を和らげたりなくしたりする治療法。姑息的治療(姑息療法)ともいう。

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