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犬のアトピー性皮膚炎について教えてください

犬のアトピー性皮膚炎について

アトピー性皮膚炎は、犬の約10%がかかっていると言われていて、最も多い病気の一つです。遺伝的要因が関与するとされており、日本では、柴犬、シーズー、ウェスト・ハイランドテリア、フレンチブルドッグ、ゴールデンレトリバーなどにアトピー性皮膚炎が多い傾向があります。

 

アトピー性皮膚炎の管理のポイントは、いかに痒みとつき合っていくかということです。
痒みを完全に抑えようとして、薬を使いすぎてしまうのは、犬にとって良いことではありません。また、たとえ皮膚が多少赤くても、痒みが少なければ犬は苦しくありません。獣医師とよく相談しながら、適切な管理計画を練ることが重要になります。

犬のアトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎というのは、アレルギーによる皮膚病の一つで、本来であれば大きな害を示さない物質に対して体が異常に反応してしまうことにより、様々な症状が出ます。原因となる物質は「アレルゲン」と呼ばれ、多くの場合は環境中に存在する物質です。家のチリの中に存在し、人や動物のフケなどを食べるダニ、スギやブタクサなどの植物の花粉、猫のフケ、カビ類などが原因となることが多いです。吸い込むことが原因ではなく、アレルゲンが皮膚の中で反応することが原因といわれています。また、アトピー性皮膚炎の犬は皮膚のバリア機能や保湿力が低下していることが多く、これもアトピーを発症する要因となっています。

 

つまり、アトピー性皮膚炎は、
①遺伝的な素因がありアレルギーを起こしやすい体質がある。
②アレルゲンが存在する。
③皮膚バリア機能が低下し、アレルゲンが体内に侵入しやすい。
など、いろいろな要因が重なって発症する複雑な病気です。
根本的に治すことが難しく、まだパピーのうちに発症し長期に渡るため、獣医師も飼い主も治療や管理に大変苦労させられる病気です。

 

アトピー性皮膚炎は、多くの場合5歳位までに発症し、必ず見られる症状は「痒み」であり、絶えず引っ掻いたり、なめたりします。症状の出やすい箇所は、目や口の周り、耳、脇、下腹、四肢の先端などで、慢性の外耳道炎を伴うことも多く、脱毛や皮膚の赤みも見られ、長期にわたると皮膚が黒ずんだり厚くなったりします。

 

ただし、痒がっているからといって、すべてアトピー性皮膚炎というわけではありません。また、他の病気(表在性膿皮症や食事アレルギーなど)も同時に関係することがあり、獣医師にきちんと診断してもらうことが重要です。確定診断のための検査はなく、いろいろな検査から総合的に判断することになります。血清による検査は、その犬がアトピー性皮膚炎かどうかの検査ではありませんが、原因の推定には役立ちます。

犬のアトピー性皮膚炎の治療方法

アトピー性皮膚炎の治療は大きく分けると、環境の整備、皮膚のケア、薬による体質・症状の管理となります。環境の整備とは、原因物質をなくすことになりますが、家のチリや植物の花粉などを犬に全く接触させないとこうことは、現実的には不可能です。ただし、シャンプーを頻繁に行うことにより、体表のアレルゲンを減らすことは可能です。

 

皮膚のケアにより、バリア機能を回復させれば、アレルゲンが皮膚の中に侵入することを防ぐことができ、症状を緩和することができます。具体的には、保湿性のシャンプーやコンディショナーを用いて皮膚の水分保持を助けます。この際のシャンプーや保湿剤の選択は獣医師に相談することです。

 

アトピー性皮膚炎の治療薬の選択肢として、コルチコステロイド、抗ヒスタミン薬、免疫抑制剤、インターフェロン療法、減感作療法などがありますが、「魔法の薬」はなく、それぞれ長所と短所があります。特にコルチコステロイドは、効果は高いが副作用が問題となります。ただし、強い症状を急速に緩和させるためには、コルチコステロイドを投与せざるを得ないこともあります。どの薬もそうですが、いたずらに怖がるのではなく、他の薬剤と組み合わせるなどの適切な使用を考えていけばよいのです。また人間のアトピー性皮膚炎では外用薬が用いられることが多いですが、犬は毛に覆われていることや、薬を舐めてしまうことなどから、あまり使用頻度は高くありません。症状の出ている箇所が小さい場合は有効になるでしょう。

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