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進行性網膜萎縮症(進行性網膜変性)について

進行性網膜萎縮症について教えてください

進行性網膜萎縮症

眼球の網膜が萎縮(小さくなり機能が弱まる)して視力障害が生じるもので、遺伝病です。視力障害は、当初は暗い場所で(夜盲といいます)、やがて明るい場所でも認められるようになり、最終的には失明してしまいます。

 

アイリッシュセッターに多発する遺伝病で、PRA(Progressive Retinal Atrophy)の略称で呼ばれることもあります。

 

飼い犬の視力が低下しても、慣れた場所ではほとんど影響を受けないため、多くの飼い主さんはなかなか気が付かないようです。

 

まれに、この病気の症状である、明るい場所でも散大(広がっていること)している瞳孔や基板(眼の脈絡膜の一部にある反射性の色素を含むところ)の異常反射に気づく場合もあるようですが、これらと視力低下を結びつけて考えることは、一般的には少ないでしょう。

 

犬がほぼ完全に失明した段階になってから、動物病院で診察を受けて、この事実に気づくことになります。

 

アイリッシュセッターの場合は早発性で、生後3~4ヶ月齢から2歳くらいまでに症状が認められるようになります。ハッ正直と視覚障害の程度は、同じ母犬から生まれた子犬同士でも異なります。なお、進行性網膜萎縮症(進行性網膜変性)にかかっていると、白内障を併発しやすいことが報告されています。

 

進行性網膜萎縮症がみられやすい、主な犬種としては、2歳ころまでに発症する早発性では、アイリッシュセッター、コリー、ミニチュアシュナウザー。4~6歳ころから発症する遅発性では、秋田犬、イングリッシュコッカースパニエル、ラブラドールレトリバー、トイプードル。中心性網膜変性では、ボーダーコリー、ゴールデンレトリバー、シェットランドシープドッグなどが挙げられます。

 

なお、中心性網膜変性(同じく遺伝病ですが進行性ではない)の場合は、視野中心部の視力は失われても、完全には失明しません。

進行性網膜萎縮症の原因

進行性網膜萎縮症は多くの犬種において知られていますが、人間の色素性網膜症のモデルとして、特に米国で研究が進んだため、発生のしくみが明確になりました。すなわち、常染色体劣性遺伝によるものであり、その遺伝子も特定されています。

 

瞳孔から眼球内に入った光は、水晶体と硝子体を通過して網膜の部分で受容されます。網膜には錐体細胞と桿状体細胞という2種類の視細胞があります。これらが形成不全に陥り、そのなかの光エネルギー変換経路に異常が生じて、サイクリックグアノシン1リン酸(cGMP)が異常に多く蓄積する結果として、網膜変性が生じます。視力障害は両眼に発症し、進行します。

 

※常染色体劣性遺伝とは

常染色体(性染色体以外の染色体)にある劣性遺伝子によって起こる。劣性遺伝とは、両維新の療法から原因遺伝子を受け継いていれば、各々の遺伝子としての強さにかかわらず発病する遺伝のこと。ここでいう劣性とは「劣等」ではなく「弱い」という意味。

 

※サイクリックグアノシン1リン酸(cGMP)とは

ほぼすべての動物の体内に広く存在する物質で、網膜では、光の情報を電気的情報として視細胞へ伝える反応にかかわっている。

進行性網膜萎縮症の治療

網膜の変性は元に戻らないため、治療の手段がありません。しかし、たとえ視力が完全に失われた場合でも、慣れた場所で快適な生活を送れるよう飼育環境を整える努力をしましょう。なお、進行性網膜萎縮症は遺伝病ですので予防することはできんません。ただし、この病気の遺伝子を持っているか、血統を調べることはできるでしょう。

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